Heuristically-programmed ALgorithmic computer (*)
9000 Series
命名 | ハル / Heuristically-programmed ALgorithmic computer / 発見能力をプログラムされたアルゴリズミック・コンピューター (*)。 I B M というアルファベットを一文字づつずらして H A L と命名したという実しやかな説が蔓延してしまっているが、アーサー・C・クラーク自らが否定している通り、これは全くのデマである。 デマであるのに何故これほどまでに蔓延したのかというと、そのように設定されたほうが都合が良い ある組織が この説を積極的に支持して流通させたからである。 |
|
設計 | 設計者は チャンドラ博士。フルネームは 「シバスブラマニアン・チャンドラセガランピライ (**)」(インド系アメリカ人)。イリノイ大学アーバナ校コンピュータ科学教授 (2010年では)。 |
|
構想 | 人間の脳を模倣する 最狭義の人工頭脳。 「任意の学習プログラムに従って神経回路網を自動的に発生させる --- 自己複製させる (*)」、 「人工頭脳を人間の頭脳の発達に酷似したプロセスで成長させる (*)」、 「人脳の活動の大部分を、人脳よりはるかに優れた速度と確実さで再生する (*)」 コンピュータシステム。 現実に言われている 「ニューロコンピュータ/ニューラルコンピュータ」 に極めて近いのではないか (補足を参照)。 |
|
製造 | アメリカ合衆国イリノイ州アーバナのHAL工場 (製造番号3号)。 |
|
作動日 誕生日 |
小説2001年宇宙の旅では 1997年1月12日 。映画2001年宇宙の旅/小説2010年宇宙の旅では 1992年1月12日。 |
|
教育 | HAL9000 (3号) の最初の 「先生」 はチャンドラ博士。「デイジー」 という歌を教えた先生は、映画2001年宇宙の旅ではラングレー。小説2001年宇宙の旅/小説2010年宇宙の旅ではチャンドラ博士。 |
|
ストレージ | 補助記憶装置は ホログラフィックメモリ (三次元メモリ) を採用 |
|
思考 | イギリスの数学者アラン・チューリングのテストをHALは容易にクリアできることから明らかに思考している。「機械の返事が人間のそれとまったく見分けがつかないようなら、その機械は、いかなる常識的な定義に照らしあわせても、思考しているのである。(*)」 |
|
チューリング | アラン・チューリング (Alan Mathison Turing)。1912年6月23日 ロンドン (Paddington) に生まれる。数学者、コンピュータ・サイエンスの創始者にして暗号解読者。ケンブリッジ大学出身。彼が考案したチューリング・マシンは現在のコンピュータの原形ともいわれる。第二次世界大戦中には暗号解読にも取り組む。 「コロッサス(コロサス)」 は1943年にイギリスで制作された暗号解読機だが、その誕生のきっかけを与えたのも彼だ。世界初のコンピュータといえば誰しも エニアック(ENIAC/1946年)の名を上げるが、同解読機は見方によっては世界初のコンピュータである。後に彼自身が手がけた暗号解読機 「ボンブ(Bombe)」 にしてもしかり。 「コンピュータの思考について」 思いを巡らせた 「チューリング・テスト」 は アーサー・C・クラークにも少なからず影響を与え、それは 「2001年宇宙の旅」 の HAL に吹き込まれることになる。 1954年6月、チューリングは謎の自殺をはかる。 |
|
地位と任務 | 実質的な ディスカバリー号 の支配者。第六番目の乗組員としてのHALは、その中枢神経を司り、緊急時には自律的な任務遂行を許されている(「行動規定補助事項C一四三五ダッシュ四 (*)」)。しかし、HALが特別なのは、目覚めているクルーの中で唯一 真の任務 を知っていることである。 |
|
妹 | 当初製造された9000型は2〜3台。うち、1台 (製造番号3号) はディスカバリー号に、2台は地球側の管制室に置かれていた。2010年宇宙の旅ではHAL9000の双子の妹SAL9000が登場する。彼女は兄HAL9000(3号) の安否を気づかいチャンドラ博士の良き相談者となっていた。チャンドラ博士は後にHAL10000の設計に取りかかる。 |
|
睡眠 | 常識的には不眠となろうが、HALには 「目・眼球 (広角レンズ)」とおぼしきものがあることから、眠るとしたら 「レム睡眠」 状態だろうか。「眼球運動の活性化」 までは模倣していないだろうが・・・。 |
|
夢 | 「HAL9000は夢を見るかどうか解らない」 (映画2010年宇宙の旅中のチャンドラ博士の言葉)。「SAL9000はHALの夢を見るだろう」 (映画2010年宇宙の旅中のチャンドラ博士の言葉)。SAL9000の 「わたしは夢を見るでしょうか?」(**)という質問に対して 「ああ、見るとも。 (**)」 とチャンドラ博士。 |
|
会話 | 映画 2001年のHAL9000の声 ( ダグラス・レイン ) は なまりの無い無機質な声で成功しているが、小説2010年のSAL9000はチャンドラ博士の影響を受けてヒンズー (インド) なまりの英語になってしまったようだ。 |
|
病歴 | 「ホフスタッター=メビウス・ループ (**)」。人間の病理に例えるとパラノイア症状あるいは精神分裂症。小説中のチャンドラ博士は 「変則的行動」 ととらえる。 |
|
ゲーム | チェッカー、チェス、ポリオミノー等の数学的ゲーム。但し、人間と対戦するときの勝率は 「50%」 にプログラムされているようだ。 |
|
好きな歌 | デイジー (Daisy) |
|
存在と意識 | 物理的なHAL9000 (3号) という存在はディスカバリー号と共に熱波で消滅したが、生命体でいうところの 「意識」 のようなものは存続し、別の時空間へと移動したらしい。 |
|
補足 |
ニューロン (neuron) ニューロチップ (neuro chip) ニューラル・ネットワーク (neural network) ニューロ・コンピュータ(neuro computer)/ニューラル・コンピュータ(neural computer) |
チューリング | 参考 2001年宇宙の旅 (早川書房) 2010年宇宙の旅 (早川書房) 2001 A Space Odyssey (Paperback) 2010 Odyssey Two (Paperback) 2001 A Space Odyssey (MGM) 2010 Odyssey Two (MGM.UA) Script: Internet Resource Archive (*) 2001年宇宙の旅 (早川書房) より引用 (**) 2010年宇宙の旅 (早川書房) より引用 |
|
Writer: Masaakix Web site: http://www.masaakix.interlink.or.jp/ |