001) チャンドラ博士はHALに「自尊心」を植え付けた

ボーマンやプールと共にM・エイマーのインタビューを受けているHALには、それは 「模倣」 には違いないが、「自尊心」 のようなものが感じられた。通常なら 「うぬぼれ」 と批判されそうな口調にもかかわらず、なぜか納得させられるのは、その言葉には実績が伴っているからである。そしてなにより HALが人間ではないからである。

ミスをおかさない機械など存在しない。プログラムも同様である。しかしHALは完璧性と高信頼性が当初からの約束事だった。ミスをおかさない(おかせない)仕組みになっていたのである。

このようなコンピュータシステムにおいて 「模倣された自尊心」 はどのように作用するのかというと、システムの外部に対して、人間に対して、安心感を与えるのである。人間の安心感や信頼感が魚眼レンズを通してHALにフィードバックされることで情報処理や判断が的確だったことをHAL自身が再認識できるのだ。

この「模倣された自尊心」に傷がつくのが 「AE35ユニット」(*) の故障に関する誤報である。HALは自分の情報処理や判断がクルー達に不安感を与えたことを認識した。エラーを生じさせたファクター (極秘任務) が判っていても取り除くことはできない。クルー達は徐々にHALに不信感をつのらせ それがHALにフィードバックされる。際限のない悪循環の始まりである。

この 「模倣された自尊心」 をHALに植え付けたのはチャンドラ博士であるが、そこには 博士自身の性格が無意識に反映されていたようである。「模倣された自尊心」 がダメージを受けた場合のサブルーチンを用意していなかった、、、エラーをおかすHALを想定することは博士自身の自尊心が許さなかったのではないか。

参考
2001年宇宙の旅 (早川書房)
2010年宇宙の旅 (早川書房)
2001 A Space Odyssey (MGM)
台本(Internet Resource Archive)
(*) 2001年宇宙の旅 (早川書房) から引用
(**) 2010年宇宙の旅 (早川書房) から引用
2001 A Space Odyssey (Paperback)
2010 Odyssey Two (Paperback)
2010 Odyssey Two (MGM.UA)
その他

Writer: masaakix Web site: http://www.masaakix.interlink.or.jp/

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