002) 殺人を犯したHALに罪の意識はあったのか

パラノイアになったHALは声のトーンも低くなり (映画では) その反応時間も徐々に長くなっていった。今の自身の不具合に何とか対処しようと自己診断ルーチンを絶えず行き来しているからだろうか。哀れである。

HALがボーマンやプールを拒否した行為は、彼等の不信感がこれ以上自分にフィードバックされないためには、「模倣された自尊心」 がこれ以上ダメージを受けないためには、必要な処置だったのかもしれない。そもそも想定されていなかった状況なのだから。

そして、船内に残された人工冬眠状態のクルー達も、静かに、しかし確実な方法で拒否された。

殺人を犯したHALには、多分、「罪の意識」 はなかったのだろう。「罪の意識」 という精神状況は極めて人間的なものであり、そこには、体質、気質、生まれ育った環境、両親から受けた愛情の大きさなどが作用する。単なるプログラム的な 「模倣」 ではなしえないからである。

行為者に 「罪の意識」 がなければ処罰しえないという人間社会の原則を敢て持ち出せば、後にボーマン船長がHALに対して行なった 「ロボトミー」 手術は船内の秩序を保つための やむを得ない 「保安処分」 だったといえる。

参考
2001年宇宙の旅 (早川書房)
2010年宇宙の旅 (早川書房)
2001 A Space Odyssey (MGM)
台本(Internet Resource Archive)
(*) 2001年宇宙の旅 (早川書房) から引用
(**) 2010年宇宙の旅 (早川書房) から引用
2001 A Space Odyssey (Paperback)
2010 Odyssey Two (Paperback)
2010 Odyssey Two (MGM.UA)
その他

Writer: masaakix Web site: http://www.masaakix.interlink.or.jp/

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