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SATURN 01-10 AS 201 202 203 APOLLO 01 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
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Summary Damage Life boat Cameras Lunar Surface![]()
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Mission type Launch Launch vehicle Payload (Spacecraft) Mission Commander Command module pilot Lunar module pilot Earth orbit insertion Translunar injection LO2 tank anomaly lunar orbits Lunar Landing site Trans-Earth injection Duration Earth Splashdown Depository |
1970年4月11日午後2時13分 (EST /CST:13時13分)、ケープケネディ Launch Complex 39 Pad A から打ち上げられたアポロ13号は三回目の有人月着陸を目指した。月周回軌道上から次期ランディング・サイトの観測を含む月面の撮影を行い、月面船外活動によってサンプル採取や各種実験を行なう予定だ。 クルーは船長のジェームズ(ジム)・ラベル、司令船パイロットのジョン(ジャック)・スワイガート、そして月着陸船パイロットのフレッド・ヘイズである。 ちなみに、司令船パイロットのジョン(ジャック)・スワイガートは元々はバックアップ司令船パイロットだった。体調不良(German measles/風疹)のケン・マティングリー(Thomas Ken Mattingly II)に代わって急遽司令船パイロットとなったのだ。その他のバックアップは、バックアップ船長のジョン・ヤング(John W. Young )、バックアップ月着陸船パイロットのチャールズ・デューク(Charles M. Duke )である。 今回のミッションは、打ち上げ・ロケット及び宇宙船については、パラシュート関係で司令船(Command Module)の重量が増加したことを除けば前回とさほど違わないが、実験(機材)の構成・内容は前回とは少々異なっていた。 前回と最も異なる点といえば、ランディング・サイトへの注目度だろう。フラマウロ(Fra Mauro )は、あらゆる面でエキサイティングなのだ。 フラマウロ・クレーター(Fra Mauro crater、6.0S,17.0W、直径約95km)周辺のエリアは、島の海(Mare Insularum)と既知の海(Mare Congnitum)の境界に位置している上に、「高地」「山脈」「谷」などが入り乱れていて、地質学的な見地からの最重要拠点として注目さてていた。ランディング・サイトに選ばれたのも当然である。このサイトへの「こだわり」は次のアポロ14号にも垣間見ることができる。 1970年4月11日14時18分30秒、離陸後5分半ほど経過した時点で、飛行士たちは異常な「振動」を感じ取っていた。サターンV型ロケットに何らかの不具合が発生している模様だ。 このままの状態を続行すれば大きなリスクを背負うことになる。そこで、第二段目(S-II /J-2エンジンx5)の中央のエンジンを予定より2分ほど早くシャットダウンし、逆に他のエンジン(J-2エンジンx4)を34秒ほど余計に燃焼させる。さらに、三段目(S-IVB /J-2エンジンx1)のエンジンの燃焼時間を9秒間延長して、ロケット全体としての推力を確保することに尽力した。これで、予定通り、地球周回軌道に乗ることができた。 その後アポロ13号は、地球周回軌道上でサターンV型ロケットの三段目(S-IVB)に再点火して加速し、周回高度を上げ、地球の引力圏を離脱した。三段目(S-IVB)の LM アダプター・パネルが開き、CSM と LM がドッキングするのも予定通りである。なお、三段目(S-IVB)には「月面に激突して人工月震」を引き起こす役目があるので、宇宙船(CSM/LM)とともに月面を目指すことになる。 自動操縦装置によるコントロール下、順調な飛行が続いていた。 1970年4月13日午後10時7分53秒、地球から約 320,000km(地球と月の平均距離は384,401km)の位置でそのアクシデントは発生した。司令船パイロットのスワイガートが酸素タンク攪拌用パワー・ファンのスイッチを入れると同時に爆発が起こったのだ。 "Houston, we've had a problem here." 電源の中枢であるメーン・バスBの電圧がどんどん低下していく。SM(Service Module /機械船)からは何かが漏れ出しているようだ。 爆発後数十分が経過して、アクシデントの全体像が見えてくる。爆発したのは SM(Service Module /機械船)の第二酸素タンクのようだ。被害状況を纏めると、第二酸素タンクと燃料電池が二つやられて使用不能である。第一酸素タンクはバルブが損傷し残量も2時間分しかない。それらに伴って、二系統ある電気(分配)系統のうちの一つメーン・バスBが使用できなくなっている。 機能しているのは第一酸素タンクと燃料電池一つ、及びメーン・バスAのみである。この状況下では、酸素(燃料電池用、呼吸用)、電力、そして水(燃料電池で生産)が大幅に不足し、ロケット・エンジン、誘導措置/コンピュータ、各ヒーターなどが使用不能ないしは使用制限されることになる。 アポロ宇宙船は、このような重畳的アクシデントに対処できるシステムになっていない。第二酸素タンク爆発、第一酸素タンク損傷、燃料電池機能停止などが同時に襲う状況はシミュレーションにも無かったのだ。クライシスである。 地球から遠く離れたこの宇宙空間で救助船など望むべくもないが、幸いなことに、アポロ宇宙船は3つのモジュールで構成されている。潜水艦が浸水したブロックを閉鎖して沈没を免れるがごとく、無傷のモジュールに一時退避することで宇宙船としての機能を維持することが可能なはずである。 無傷の LM(Lunar Module /月着陸船)には「救命ボート」としての機能が盛り込まれていたのだ。100万点以上のパーツで構成される LM は数千人の技術力と9年の歳月をかけて開発された信頼性・補充性の高いモジュールである。これを SM(機械船)の代替モジュールにできれば地球に帰還できるかもしれない。 推力(ロケット・エンジン、推進剤)、呼吸用酸素とも充分である。但し、水と電力の不足は否めない。SM(機械船)は投棄せずに CM(司令船)に連結したままにする(CSM)。CM 底部の熱シールド(大気圏再突入時の高熱からCMを守る)を保護するためである。電力節約のために CM の自動誘導装置を切って手動で制御する。ヒーターは極力使用しない。二酸化炭素の除去についても一工夫を要するだろう。 ロケット・エンジンの推進剤を節約するために、無駄な逆噴射(方向転換)をせずに月の引力を利用する軌道(自由帰還軌道 /月周回軌道投入に失敗しても地球に戻ってこられる軌道)をとることにした。LM の噴射ノズルが地球を向くように姿勢を制御してからエンジンに点火して加速した。 ロケットの噴射タイミングや複雑な軌道計算は地球側管制センターのコンピュータに任せる。LM 搭載のコンピュータでは能力不足だからだ。 結果的には、バックアップ・クルーたちを交えて考え出された数々の妙案が効を奏しクルー達は月を回って無事に地球へ戻ることができた。 しかし、後になって判明した爆発原因がどうも釈然としない。酸素タンク攪拌用ファンの電線の被膜が剥がれてショートし、スパークを放って爆発したとされるが、これは、アポロ計画で使われた部品の精度からして考えられないことである。 さらに、酸素タンクの 「爆発」 によるダメージが SM のみで済んだというのも奇跡的だ。爆発であるから、CM や LM が損傷を受ける可能性は非常に高いのである。もちろん、CM や LM が損傷を受けていれば無事に帰還することは出来ない。LM は「救命ボート」として使えず、CM は大気圏再突入時に燃え尽きていたに違いないからだ。 クルーたち、特に司令船パイロットのジョン(ジャック)・スワイガートと月着陸船パイロットのフレッド・ヘイズは、この非常事態にもかかわらず月面の観測・撮影に夢中になっていたという。特に、月の裏側には感銘を受けたようで、ツィオルコフスキー (Tsiolkovsky) クレータ(Tsiolkovsky crater /21.2S,128.9E、直径約185km)などを観測・撮影していたという。 アポロ13号の「13」や打ち上げ時間が 13時13分 (米中央標準時) であったことを不吉ととらえる向きもあるが、筆者としては、CM (司令船) の愛称 「オデッセイ (Odyssey) 号」 が妙に気にかかる。
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The Damage to the Service Module
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The No. 2 oxygen tank , An explosion and rupture |
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右のイメージは、第二酸素タンクの爆発によって外側のカバー(No.4 Cover)が吹き飛ばされた SM(Service Module /機械船)である。破損甚だしい。イメージ左下の球形のものが液体酸素タンクで、第一酸素タンクもバルブ損傷等のダメージを受けている。中央の円筒形のタンクは液体水素タンク。 イメージでは見えていないが、さらに左側 (CM 側) に行った所に燃料電池が3パッケージ備わっている。
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Damage to the teflon insulation on the electrical wires to the power fans |
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元来、第一/第二酸素タンクは CSM(Command Service Module)の直流28ボルトで作動するように設計されていたが、アポロ13号のものは直流65ボルト規格に変更されている。もっともその変更には、ヒーター・サーモスタット・スイッチは含まれておらず直流28ボルト規格のままだった(なぜだろう?)。結果的には、あえて、直流65ボルトに絶えられないウイークポイントを作ってしまったともいえる。 アポロ13号 SM の第二酸素タンク(*)については、まず、テスト段階において不具合が現出していた。直流65ボルトを8時間流したことでヒーター・サーモスタット・スイッチが故障し、その結果として、攪拌用パワー・ファンの電線の絶縁被膜(テフロン)にダメージを与えたのである。 実際のアポロ13号ミッションでは、爆発直前まで、直流65ボルトを56時間流し続けて攪拌していたのだから、テスト段階と同様、攪拌用パワー・ファンの電線の絶縁被膜(テフロン)が剥がれ、スイッチオンと同時にショートしてスパークを放ったとしても不思議ではない。 -----
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Engines and Oxygen |
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アポロ13号宇宙船は、爆発事故によって SM(機械船)とCM(司令船)の機能を失ったが、LM を代替モジュールとして活用することで無事地球へ帰還している。なぜそのようなことが出来たのかというと、LM は、着陸用ステージ(Descent stage)と上昇用ステージ(Ascent stage)とに別れた二つのコンポーネントで構成されていて、それぞれのコンポーネントには別個のロケット・エンジンと推進剤が搭載されていたからだ(SM のメイン・ロケット・エンジンの代わりになる)。さらに、月面船外活動用の装備(酸素、食料等)、予備・緊急用の装備が全て使用できる状態にあったことも大きい。 LM(月着陸船) の開発は予定を大幅に遅れアポロ計画全体の足を引っ張ったが、反面、開発期間の延長は、信頼性及び補充性(代替モジュール/救命ボートとなる得る機能・装備)という余禄を付加してくれていたのだ。
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救命ボートの機能があるとはいえ LM は基本的に定員2名のモジュールである。時間の経過に伴っていくつかの不具合が出はじめた。一つは、二酸化酸素の濃度である。LM の二酸化炭素除去フィルターが悲鳴をあげたのだ。二酸化炭素濃度が高くなると、頭痛、めまい、吐き気等の体調不良を引き起こし、思考力も大幅に低下する。 そこで考案されたのが CM のフィルターの利用だ。フィルターの形が LM (丸型) と CM (四角型) では異なるので、粘着テープ、ボール紙、ビニール等で細工を施す。
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A serious shortage of water |
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推力(ロケット・エンジン、推進剤)や呼吸用の酸素及び食料は LM で代替可能だが、飲料水については如何ともしがたい状態だった。飲料水の生産現場である SM の燃料電池が機能を停止していたからだ。実際のところ、飲料水不足は深刻で、クルー全員が脱水症状になった。特にフレッド・ヘイズは症状が重く、ついには膀胱炎になってしまった。ヒーターを切った低温と相まって体が震え出す。飲料水不足は死につながりかねない問題だった。
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70-millimeter Hasselblad EL Camera (70ミリ ハッセルブラッドELカメラ /電動) ×2 70-millimeter Hasselblad Data Cameras (70ミリ ハッセルブラッド データカメラ/電動) ×2 16-millimeter Maurer Data Acquisition Cameras (DAC/16ミリ ムービーカメラ) ×2 35-millimeter Lunar Surface Close-up Stereoscopic Camera ×1 Hycon topographic camera (地形図用カメラ) ×1 カメラの使用制限/機能制限
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Full Moon /Nearside/Farside |
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アポロ13号宇宙船から撮影された「印象深い月」。月の裏側を含むこの姿は地球からは絶対に見ることができない。月面の凹凸に立体感のない典型的な満月だが、非常事態であることを忘れさせる程の雰囲気があったのかもしれない。 Mare Nectaris(神酒の海、直径約350km)、Mare Fecunditatis(豊かの海)、Mare Tranquillitatis(静かの海)、Mare Vaporum(蒸気の海、直径約230km)、Mare Serenitatis(晴れの海)、Mare Crisium(危機の海、直径約570km)、Mare Marginis(緑の海、直径約360km)、Mare Smythii(スミス海)、Mare Humboldtianum(フンボルト海、直径約160km)、Mare Australe(南の海、直径約900km)。Tsiolkovsky crater(ツィオルコフスキー・クレーター、21.2S,128.9E、直径約185km)、ラングレヌス・クレーター(Langrenus crater、8.9S,60.9E、直径約132km)などが確認できる。
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アポロ13号宇宙船から撮影されたツィオルコフスキー・クレーター(Tsiolkovsky crater/21.2S,128.9E、直径約185km)である。位置としては月の裏側の南東寄りで、太陽系最大の規模を持つ南極-エイトケン盆地(South Pole-Aitken Basin)の縁にも近い。この月の裏側を代表する大クレーターは、漆黒の滑らかな地域と中央の火口島らしき地域とのコントラストが素晴らしく、ひときわ目だっている。アポロ8号の画像よりもかなり鮮明である。非常事態にあえて撮影する程の価値のある画像かもしれない。 ツィオルコフスキー・クレーターはアポロ8号、アポロ15号、ルナ・オービター3号でも撮影されている。
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The bright-rayed crater(Fabry crater) and Joliot-Curie crater /Farside |
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イメージ中央の鮮やかな光条を放っているクレーターがファブリ・クレーター(Fabry crater、about 45N,105E)で、緑の海(Mare Marginis、直径約360km)の北東側に位置している。ジョリオ・キュリー・クレーター(Joliot-Curie crater、25.8N,93.1E、直径約164km)は、ちょうど、ファブリ・クレーターと緑の海 の中間あたりにある。いずれも、月の裏側に属する地形である。 このエリアに関しては、アポロ8号の画像も参照。
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イメージ左下の海(漆黒の滑らかなエリア)がモスクワ海(Mare Moscoviense)で、月の裏側には珍しいマテリアル(素材)を見せている。位置としては裏側の北東よりである。 月の裏側にも表側のように巨大な海が散らばっているものと予想されていたが、実際には、裏側は表側に比べて極端に海が少なく、そのほとんどがクレーターや高地で占められている。裏側に属する海(巨大衝突盆地)は、このモスクワ海をはじめとして、南極-エイトケン盆地(South Pole-Aitken Basin、直径約2500km)、南の海(Mare Australe、直径約900km)、緑の海(Mare Marginis、直径約360km)、東の海(Mare Orientale、直径約300km)、スミス海(Mare Smythii)など、数えるほどしかない。 月という天体は、地形やマテリアルに限らず、なにもかもが「アンバランス」である。
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