__ | Lunar Orbiter 4 TOP _blank | __ |
|
月面探査機 ルナ・オービター4号の任務は 1号〜3号とは概念的にも活動面でも大きく異なっていた。 ルナ・オービター計画本来の仕事は1号〜3号で達成されたので、4号以降は探査(撮影)範囲をより広げて月全体を見据えたうえで様々な地形やエリアを探査することになったのである (Basin など)。 但し、それまでのミッションで行われてきた第二の任務、すなわち、月の放射能レベルやマイクロ流星体の衝突データなど、月環境に関する調査については従来通りである。 月面の写真撮影・観測は孫衛星となって月周回軌道上から行ない、その軌道設定 (計算) には太陽とカノープスの位置を見据えて安定させるシステムを用いる、、、これも1号〜3号と同様である。 そして4号は、1967年5月11日〜26日にかけて活発な写真撮影を敢行し月を30周する間に199デュアルフレームの撮影を行ない、1967年6月1日から指向性と無指向性のアンテナからなる S-band システムを利用して地球に撮影データを送信し始めた。 今回のミッションで撮影された写真データは月面の細部まで写し出されており、地球上からの観測の少なくとも10倍の情報量をもたらした。 また、その撮影エリアは、最初の周回を除き、特定のサイトをターゲットにしないで、個別的に撮影されていった。 最終的には かなりの量の撮影がなされた。 任務を終えた4号は、後に、司令に従って月面に衝突し作動を停止した。 |
Cameras
ルナ・オービター1号〜5号は共通の写真撮影システムを使用していた。 そのシステムとは、カメラ、フィルム、地球へデータを転送するためのデータ読み出しデバイスなどを、気圧や熱の問題を考慮したコンテナに収納したものだ。 このシステムに含まれる2台のカメラは、70mmフィルムと 80mm/610mmレンズを使い、絞り 5.6 (固定)、シャッタースピード 0.001/0.02/0.04秒で、同一の目標地点を異なる解像度 (中/高) で同時に撮影できる。 1号〜5号を通して撮影されたハイクォリティーな月面写真は実に1654枚。そのうちの840枚は、1号〜3号によってアポロ計画のランディング・サイトを決する目的で撮影された。4号〜5号によって撮影された残りの814枚は、月の表側が703枚、裏側が105枚、地球が6枚で、1号〜3号に比べ より広い範囲を撮影対象にしている。 |
Orientale Basin /Mare Orientale
オリエンタレ・ベイスン (Orientale Basin /Mare Orientale /東の海) は、月の表側の、西側の縁にある巨大で異様な盆地である (衝撃等でできた大規模な盆地を Basin と呼ぶ)。 大部分は裏側に属していて、地球からはその一部しか見えなかったが、ルナ・オービター4号はその全容を明らかにした。 このエリアはおよそ38億5000万年前にできたとされている。 アポロ計画のランディング・サイトではなかったので直接探査は出来なかった。 |
「bulls-eye」 |
中央の巨大な地形が "bulls-eye"。文字通り牛の目のようである。よく見るとリング状に3層からなっている。内側から、「Inner Rook Mountains」、「Outer Rook Mountains」、「Cordillera Mountains」 となる。最外周の直径は900〜930km。この盆地状の地形 オリエンタル・ベイスンは月の歴史の初期の頃に巨大な衝撃によってできたようだ。 それにしても土星の衛星ミマス (Mimas) にそっくりだ。 |
「bulls-eye」, Outer Rook and Cordillera Mountains |
これは、 "bulls-eye" の細部をとらえた拡大画像である。 イメージの左側が 「Outer Rook Mountains」、右側が 「Cordillera Mountains」。両山脈(Mountains)の西側に落ちている影が一種のレリーフとなっている (山脈の規模が判る)。 滑らかな漆黒のエリア(海のような玄武岩質の地形)が散見されるが、これは、そこが、衝撃のエネルギーによって溶解されたことを物語っているのかもしれない。 |
「bulls-eye」, Inner Rook and Outer Rook Mountains |
これも、 "bulls-eye" の細部をとらえた拡大画像である。 イメージの中央を横切っている山脈が 「Inner Rook Mountains」 で、その下側には 「Outer Rook Mountains」 が見える。 イメージ上部の漆黒(海)のエリアは玄武岩の薄い層で覆われているものと思われる。 |
雨の海 (Imbrium Basin /Mare Imbrium) の直径は 1160km。月の表側では最大の規模をもつ盆地であり、月の巨大盆地としては2番目に若い。 この付近をランディング・サイトとしたアポロ15号が持ち帰ったサンプルは、雨の海が38億5000万年前に形成されたことを示した。 なお、月の裏側には直径が雨の海の2倍以上 (2500km) もある 南極−エイトケン盆地 (South Pole-Aitken Basin) が存在している。 |
Mare Imbrium and Mare Serenitatis and Apennine Mountains (1) |
イメージの上左が雨の海 (Mare Imbrium /Imbrium Basin)、上右が晴れの海 (Mare Serenitatis) である。これら両 Mare を分かつように上中央に走る山脈がアペニン山脈 (アポロ15号のランディング・サイトの隣)。 コペルニクス・クレーター (Latitude:9.7 N 、Longitude:20.1 W、直径約107km) は、雨の海の下側に位置する (イメージ中央のクレーター)。 |
Mare Imbrium and Mare Serenitatis and Apennine Mountains (2) |
このイメージは、アペニン山脈とアポロ15号ランディング・サイトのハドリー・アペニン (Hadley-Apennine) 付近にズームインしたものだ。中央に走るのがアペニン山脈で、雨の海 (Mare Imbrium /Imbrium Basin /イメージ上左) と 晴れの海 (Mare Serenitatis /イメージ上右) を分岐させる格好となっている。アポロ15号は、雨の海側の蛇行する裂溝 (Hadley Rille) の、その右側にランディングした。ちょうど、Hadley Rille とアペニン山脈とに囲まれた三角州のようなエリアである。 |
湿りの海 (Mare Humorum /Humorum Basin /直径825km) はアポロ計画のランディング・サイトではなかったので直接探査は出来なかった。 しかし、地質学的なマッピングによれば、ここが、今から約39億年前に形成されたと推定できる。それは、雨の海 (Imgrium Basin、38億5000万年前) と 神酒の海 (Mare Nectaris /Nectaris Basin) の中間に位置する年代である。 |
Overview of Mare Humorum |
直径825kmの湿りの海 (Mare Humorum /Humorum Basin) は玄武岩質の厚い層で形成されている。 中央部の玄武岩層の厚さは3km以上と推定されている。湿りの海の北の端にある ガッサンディ・クレーター (Gassendi crater) は、アポロ17号のランディング・サイトになる可能性もあったのだが。 |
Graben and Valleys |
玄武岩の重さで盆地 (Basin) の中央部分が沈みこむと、その周辺の地殻 (月殻) は引っ張られ、裂溝や谷を形づくる。このイメージの左上や右下にも、そのような地形が確認できる。 |
月の表側の南東に位置する神酒の海 (Mare Nectaris /Nectaris Basin /直径350km) は、 その形成された年代が、雨の海 (Mare Imbrium /Imbrium Basin)、東の海 (Mare Orientale /Orientale Basin)、湿りの海 (Mare Humorum /Humorum Basin) などより古いといわれている。 アポロ16号の持ち帰ったサンプルからは 39億2000万年前と推定された。 |
イメージの左上から右下に走るアルタイ壁 (Altai Scarp /Altai Rupes) は、ちょうど神酒の海 (Nectaris Basin) の南西側の縁に位置している。 地形学的に見て非常に複雑なエリアだ。 |
Copernicus crater |
右イメージの左下が、月の表側で最も目立つ存在のコペルニクス・クレーターである。Latitude:9.7 N 、Longitude:20.1 W、直径約107km。月の地質学的な歴史からいうと極めて若いクレーターといえる。おそらく、形成されてからまだ10億年は経過していない。コペルニクス・クレーターを有名にしたその光条 (Bright-rays) は月面の大部分を包みこむような規模で圧倒される。 右下のイメージの中央も同クレーター。 なお、同クレーターは アポロ12号、アポロ17号 でも撮影されている。 |
Alphonsus Crater and Davy |
イメージ中央の大クレーターがアルフォンスス・クレーター (Alphonsus Crater) である。Latitude:13.7 S、Longitude:3.2 W、直径約108km。ハロー (後光) 効果のかかったこのクレーター周辺は地質学的にも興味深いエリアであるが、このクレーターを論じるならば 「ガス噴出事件」 を無視することはできない。 1958年11月3日、クリミヤ天文台はアルフォンスス・クレーターの中央付近からガスが噴出しているのを発見する。 撮影されたスペクトル写真には炭素分子の吸収帯が認められたというのである。 後に、コールド・ムーンを通説とする学会において数々の論争を巻き起こす。1965年3月、月面探査機 レンジャー9号 はアルオンスス・クレーター付近を衝突寸前までテレビ信号で送信していた。 なお、アポロ12号もアルフォンスス・クレーターを撮影している。 イメージ左上の Davy crater (Latitude:11.8 S、Longitude:8.1 W、直径約34km) 付近の連鎖クレーターが有名な Davy crater chain だ。 この連なりは、47kmの長さに23個の小クレーターを含み、夫れ夫れの小クレーターは 1〜3 km 程の直径である。 どのようにして形成されたかについては諸説あるが、1994年7月に木星に衝突したシューメーカ・レビー第9彗星のような彗星群が月面に衝突したとの説も提出されている。 それにしても、整い過ぎの感がある連鎖クレーターである。Davy についてはアポロ16号 も参照。 |
End of Lunar Orbiter 4 TOP _blank