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SATURN 01-10 AS 201 202 203 APOLLO 01 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
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Summary Cameras Lunar Surface Landing site Eva Lunar Samples Science Experiment![]()
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Mission type Launch Launch vehicle Payload (Spacecraft) ALSEP Mission Commander Command module pilot Lunar module pilot Translunar injection CSM-LM docking Lunar orbit insertion LM's crews CSM-LM separation Lunar landing Lunar Landing site Lunar surface EVA-1 Lunar surface EVA-2 Lunar surface stay time Lunar samples Lunar liftoff LM-CSM docking LM Impact moon Lunar orbits Transearth injection Duration Earth Splashdown Depository |
1971年1月31日午後4時3分2秒 (EST) ケープケネディ Complex 39 Pad A。三回目の有人月着陸を目指してアポロ14号が打ち上げられた。ランディング・サイトは13号の予定地だったフラマウロの高地エリア(Fra Mauro highlands)だ。 クルーは船長のアラン・シェパード、司令船パイロットのスチュアート・ルーサ、そして月着陸船パイロットのエドガー・ミッチェルである。 [打ち上げ延期と訓練] アポロ13号(酸素タンク爆発事故)の後遺症なのか、アポロ14号の打ち上げは延期に延期を重ねたものだった。もっとも、再三の打ち上げ延期は思わぬ恩恵をももたらしている。ハードウエアのチェックは念入りに繰り返され、飛行士たちの訓練も前例のないほど長時間に及んでいたのである(例えば、司令船パイロットのスチュアート・ルーサなどは、CM ミッション・シミュレーターで1000時間以上の訓練を受けている)。 [複雑なランディング・サイト] 滑らかなマテリアルで構成される「海」も月の歴史・構造を知る上での貴重な情報源だが、「高地」、「山脈」をはじめとする複雑でラフな地形というのも地質学的見地から興味深い。しかし、アポロ計画には、有人探査という制限事項が絶えずつきまとっている。安全に着陸し、安全に探査し、そして安全に帰還しなければならないからだ。「静かの海(11号)」のような平坦なエリアが候補地となってしまうのも致し方ないのである。 ところが、アポロ12号は、正確なピンポイント・ランディングを成し遂げる。これにより、複雑なエリアへの正確な着陸が可能となったのである。そして、フラマウロ(Fra Mauro)がアポロ13号のランディング・サイトに選ばれる。 しかし、アポロ13号は SM(機械船)の爆発事故により有人月着陸が中止されてしまう。13号は、その事故原因からしてミステリアスだが、ランディング予定地がフラマウロだったことがその謎に拍車をかけていた。 そして、今回再び14号がフラマウロを目指すことになったのだが、この、フラマウロへの並々ならぬ「こだわり」は、それが月の歴史や内部構造解明のために最適なサイトだからだ。 フラマウロ・クレーター(Fra Mauro crater、6.0S,17.0W、直径約95km)周辺は実に複雑である。互いのテリトリーを主張するがごとく張り合っている島の海(Mare Insularum)と既知の海(Mare Congnitum)、さらにそこに、高地、山脈、谷などが入り乱れている。雨の海(Mare Imbrium、直径約1160kmの巨大衝突盆地)の生成過程とも無縁ではないだろう。その他、円錐形クレーターの存在にも注目である。それは月の内部構造を知るための格好の地形であり、いわば、月面にドリルで穴を開けたようなものだからだ。最重要拠点として、再度ランディング・サイトに選ばれたのも当然である。 [月面船外活動と実験] このミッションから、月の内部構造解明のための「新兵器」が登場する。「S-Band Transponder Experiment」と「Bistatic Radar」である。 前者は、月周回軌道上の宇宙船(CSM)の速度変化から月の重力の地域的な変化を求める実験で、月の異常現象の一つである「マスコン」の存在などを炙り出した。後者は、同じく月周回軌道上の宇宙船(CSM)から月面に電波を発信して月面の状態や特性を調べるもので、とても意義深い実験だった。これら以外では、50電子ボルト以上のエネルギーを持つイオンを検出する Charged Particle Lunar Environment Experiment などがアポロ14号のみで行なわれている。月の内部構造解明はアポロ計画の核心部分であり、これらによる成果が期待された。 アポロ14号でのみ使用された機材運搬装置・MET(Modular Equipment Transporter)にも注目だ。通称「人力車(Rickshaw)」と呼ばれたこのカートは「14号限定車(次の15号からは月面車・LRVに取って代わられる)」だが、使用目的にある種のオブラートがかかっていて興味深い。 [ミッションと不確定要素] アポロ14号の時点で振り返ってみると、アポロ計画は、各ミッションの内容にしても順番にしても、なにか不確定要素のようなものにリードされていないだろうか。事前に計画された綿密なミッション・スケジュールに従うというよりも、前のミッションの成果(探査・実験結果)に従って後のミッションの内容が決定されていくように思えるのだ。ミッション・タイプについても、(部外者には知り得ない)A〜J 以外の分類があったのではないか。 ----- |
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70-millimeter Hasselblad EL Camera (70ミリ ハッセルブラッドELカメラ /電動) 70-millimeter Hasselblad Data Cameras (70ミリ ハッセルブラッド データカメラ /電動) 16-millimeter Maurer Data Acquisition Cameras (DAC/16ミリ ムービーカメラ) 35-millimeter Lunar Surface Close-up Stereoscopic Camera Hycon topographic camera (地形図用カメラ)
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地球への帰路につくアポロ14号宇宙船から撮影された月面である。典型的なアバタ面、ダークな海、イルミネーションのように光り輝くクレーターと光条。怪しい雰囲気に満ち満ちていて不気味だ(アポロ8号のそれと比較してほしい)。 中央やや右寄りの巨大な海(衝突盆地)が豊かの海(Mare Fecunditatis)で、その海の左端に位置する大クレーターがラングレヌス・クレーター(Langrenus crater、8.9S,60.9E、直径約132km)。ラングレヌスは、実際に望遠鏡で見ると非常にくっきりしていて月面観測時の目印にもなる。その他、危機の海(Mare Crisium、直径約570km)、緑の海(Mare Marginis、直径約360km)、スミス海(Mare Smythii)、神酒の海 (Mare Nectaris、直径約350km)、南の海(Mare Australe、直径約900km)などが見えている。
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Lansberg crater and Lansberg C crater |
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ハッセルブラッド・データカメラに80ミリレンズを付けて撮影されたランズベルグ・クレーター(Lansberg crater、0.3S,26.6W、直径約39km、深さ約3100m)周辺のエリアである。クレーター周囲の隆々とした盛り上がりが素晴らしい。左下のクレーターはランズベルグC・クレーター(Lansberg C crater、直径約20km)。 イメージ中央の右端辺りがルナ5号(Luna 5、旧ソビエトの無人月探査機)の着陸地点で、そこから更に南東方向に50kmほど行けばアポロ12号とサーベイヤー3号が着陸している(イメージでは見えていない)。フラマウロ・クレーター(Fra Mauro crater、6.0S,17.0W、直径約95km)は、ランズベルグから北東方向へ230kmほど行った位置にあり、アポロ14号の着陸地点はその北側のエリアである。
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イメージ上半分(北)が島の海(Mare Insularum)のエリアで、下半分(南)が既知の海(Mare Congnitum)となる。島の海は、1976年に IAU(International Astronomical Union /国際天文学連合)が承認した名称で、アポロの当時は嵐の大洋(Oceanus Procellarum)のエリアとされていた。 矢印の地点がアポロ14号のランディング・サイトで、そのすぐ下(南)のクレーターがフラマウロ・クレーター(Fra Mauro crater、6.0S,17.0W、直径約95km)だ。左上(北西)に170kmほど進めばアポロ12号とサーベイヤー3号のランディング・サイトがあり、また、上(北)へ360kmほど行けばコペルニクス・クレーター(Copernicus crater、9.7N,20.1W、直径約107km)に突き当たる。 イメージ中央右端には、デーヴィ・クレーター(Davy crater、11.8S,8.1W、直径約35km)と、連鎖クレーター群として有名なデーヴィ・クレーター・チェーン(Davy crater chain、11S,7W、連なりは約50km)が見えている。アポロ16号のデーヴィも参照のこと。
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上イメージ(Fra Mauro and Mare area)のクレーターが3つ集合しているような地形にズームインしたのが右のイメージだ。アポロ14号ランディング・サイトの下側(南側)に位置している。 一番上の(一番大きな)クレーターがフラマウロ・クレーター(Fra Mauro crater、6.0S,17.0W、直径約95km)で、左下がボンプラン・クレーター(Bonpland crater、8.3S,17.4W、直径約60km)、右下がパリ・クレーター(Parry crater、7.9S,15.8W、直径約48km)となっている。フラマウロ・クレーターの右側(東側)はなぜか開いている。クレーター内部を貫くように走る溝も興味深い。
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アポロ14号のランディングサイトは、フラマウロ・クレーター(Fra Mauro crater、6.0S,17.0W、直径約95km)の北側に位置する高地エリア(Fra Mauro highlands、3.65S,17.48W)だ。この着陸地点はコペルニクス・クレーター(Copernicus crater、9.7N,20.1W、直径約107km)の光条の道筋に位置し、また、先のアポロ12号及びサーベイヤー3号の着陸地点から170kmほどしか離れていない。 フラマウロのマテリアルは、雨の海(Mare Imbrium、直径約1160kmの衝突盆地)を作り出した「衝撃(&衝突)」が、その周辺に撒き散らしたものである可能性が高い。そうだとすると、フラマウロの地質学的な調査により、「衝撃(&衝突)」及び雨の海の年代その他が判明するかもしれないのだ。海(巨大衝突盆地)の生成メカニズムを解明することは、月の歴史を辿ることである。 LM ランディング・ポイントから1300mほどの距離にあるコーン・クレーター(Cone Crater、直径約340m)は、地球上のコニーデ型火山のような美しい円錐形をしている。しかしこのクレーターは、ただ形が美しいだけではない。フラマウロの地質を調査するには格好の地形なのだ。この円錐形クレーターは、いわば、月面にドリルで穴を開けたようなものだからである。もちろん飛行士たちは、月面船外活動(EVA-2 /Station C,C1,C2)でこのクレーターの縁の辺りを訪問・調査している。
EVA-1 /First Extravehicular Activity 着陸してから5時間23分後、EVA-1(最初の月面船外活動)が始まる。開始時刻が40分遅れたのは通信システムに問題が生じたからだ。EVA-1 の合計時間は4時間48分で、これは予定よりも30分延長されたことになる。EVA-1 は殆どがLM 周辺における実験であり、移動距離は500m程度。実施された主な実験・作業等は次の通りである。
EVA-2 /Second Extravehicular Activity EVA-2(二回目の月面船外活動)は予定よりも2時間27分早く始まった。二回目の船外活動の目玉はコーンク・レーター周辺の調査だ。フラマウロを、地質学的な見地から解明できるだろうか。 EVA-2 の移動距離は3kmにも及んだ。機材等の運搬には MET(Modular Equipment Transporter /Rickshaw)が使用されが、荒れた月面を移動するのは容易ではなく、結果的には、予定されていた実験・作業を全て行えなかった。あるものは時間を短縮され、あるものは中止を余儀なくされたのだ。なお、EVA-2 の合計時間は4時間34分だった。以下は EVA-2 における主な訪問先・実験・作業。
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Breccia 14321 |
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右のサンプルはコーン・クレーター(Cone Crater、LM ランディング・ポイントから1000m程の距離)の縁から採取された角礫岩である。直径23cm、重量9kg。月面の 60m〜80m の深さから噴出したものと思われる。 アポロ14号が採取したサンプルの殆どは角礫岩(KREEP(アポロ12号で最初に採取された特異な岩石)を含む)だったが、これは予想されたことではあった。なぜなら、角礫岩の生成には「衝撃」が作用する必要があるが、一方フラマウロは、衝突・衝撃によって作られた雨の海(Mare Imbrium、巨大衝突盆地)の副産物とでもいうべきエリアだからだ。「衝撃」によって粉々にされたものが他と混ざり合って角礫岩を作ったのである。 このサンプルは月の破滅的な歴史を経験しており、詳細な分析により、何かが浮かび上がってくる可能性がある。
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Basalt 14053 |
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右のサンプルは、直径8cm、重量251g の玄武岩である。40億年〜43億年前の岩石と推定され、アポロ計画で採取された玄武岩の中でも最古の部類に入る。化学的には他のアポロ月着陸ミッションで採取された玄武岩と同じであるが、このサイトの玄武岩にはアルミニウムやカリウム (ポタシウム) が豊富に含まれていた。 玄武岩は溶岩が凝固した、地球上でいえばハワイなどで見かける火山岩のようなもので、主に輝石や斜長石からなっている。
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ALSEP は月面上における各種実験装置群(パッケージ)で、セントラル・ステーション(Central Station)を核として、そこからケーブル類を介して各種実験機器(コンポーネント)へコネクトされている。いくつかの実験は飛行士たちが帰還した後も続行され、1977年9月まで地球にデータを送信していた。 ALSEP への電源供給は、フィン状(45度間隔で8枚)の外観が独特の原子力発電機(放射性同位元素発電機 /The Radioisotope Thermal Generator /RTG)によってなされ、実験及び地球との通信を可能としている。 原子力発電機 RTG については環境保護の観点から疑問を呈する声もある。 アポロ12号RTG、16号RTG を参照。
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月面の土壌を力学的にチェックし、それら土壌が人間の活動(動作)に及ぼす影響を調査するものである。月面着陸を行なった全てのアポロ有人月着陸ミッション(11号、12号、14号、15号、16号、17号)で行なわれた。チェックは、様々な器具(硬度計、ロッドなど)を使用して、いくつかの特性(硬度・強度、粒子密度など)について実施され、それに付随して、サンプル採取や写真撮影も行なわれている。 月表面の土壌は、10〜20cmぐらいの深さまでは容易にサンプリング・チューブを打ち込ませてくれるが、それ以上の深さとなると何らかの「技」を必要とする。例えば、70cm(これが最深)の深さまで打ち込むには、ハンマーで50回ほど叩く必要があった(アポロ15号、16号、17号では電気ドリルを使用できた)。 月表面の土壌は、微粒子状の細かい塵が堆積したようなもので、LM(月着陸船)の着陸時にはロケットの噴射で巻き上げられて雲のように辺りを覆い尽くした(全ての着陸シーンがそうだったわけではない)。さらに、これらの塵(のような土壌)には静電気を帯びたものもあって、宇宙服や実験機器などに張りついて飛行士たちをてこずらせた。 以上のような特性を持つ土壌ではあるが、LM、飛行士、実験機器、LRV(Lunar Roving Vehicle /月面車)を「埋没しない」程度には支えてくれた。もっとも、微粒子状故に「めり込み」は激しく、飛行士、各種機器、LRV(車輪)で1〜2cm、LM(フッドパッド)に至っては2〜20cm土壌にめり込んだ。
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月の磁気の計測は実験パッケージ ALSEP に含まれている磁気計によっても行われたが (Lunar Surface Magnetometer Experiment /アポロ12号、15号、16号)、この 「Lunar Portable Magnetometer」 は、異なる地点で磁気を計測して、磁気の地域的な格差を明らかにし、月の磁気の正体を解明するものである。アポロ14号と16号で行なわれた。 アポロ14号では、およそ1.1km離れた2地点間で計測を行い、43ガンマ〜103ガンマの範囲で磁気が変動していることを確認した(アポロ16号では、最大7.1km離れて計測を行い、121ガンマ〜313ガンマの範囲での地域的変動を確認することになる)。 この実験で得られた数値データと、他の実験の計測結果とをリンクさせてみると、月の磁気の発生源は「地殻」の部分にあることが推測できる。また、地球の場合は、高温の中心核に磁気発生源があるが、月の中心核にそのような性質を見出すことはできない。 以上、月の磁気を計測することは、磁気の発生源を突き止めることになる。しかし、それだけではない。月の磁気(変化)を計測することで、「(月表面からの)深さ」に対する「電導性(率)」を見積もることができ、月の構造を解明することが可能となるのだ。電導性(率)は、地質(素材)や温度によって異なってくるからである。
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太陽風は磁場を伴った電子や陽子を含む帯電粒子のプラズマ流で、地球の磁場に絶えず影響を与えている。磁気嵐やオーロラの発生は太陽風が原因である場合が多い。彗星の尾が出現するのも同様である。フレア(太陽面爆発)直後の太陽風は尋常ではなく 10,000個/1立方cm の粒子密度で飛び出してくる。 その太陽風を月面上で捕らえる実験が、アポロ11号、12号、14号、15号、16号 各ミッションで行われた。実験装置は 1.4m x 0.3m のアルミ箔のシートをポールに備え付けたもので、太陽の方角に向けられている。このアルミ箔シートを 77分 (11号)〜45時間(16号) 太陽にさらし、地球に持ち帰って分析する。月面上では、地球上のように磁場や大気層の影響を受けずに太陽風を捉えることができるのである。 アイソトープ(同位体)を分析してみると、ヘリウム-3、ネオン-20、ネオン-21、ネオン-22、アルゴン-36 などの存在が確認された。
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この実験は、月の地震(以下月震)を記録して、そのデータを地球に送信し、月の内部構造を明らかにするものである。アポロ11号、12号、14号、15号、16号 各ミッションで行われた。 人工的な月震を発生させるためにサターンV型ロケットの三段目(S-IVB) と 月着陸船の上部コンポーネント(Ascent stage)を月面に激突させる試みもなされた。アポロ12号、14号、15号、16号で実施されたPSEでは観測データを1977年9月まで地球へ送信している。※1 各サイトの地震計で構成される「ネットワーク」は、(1) 流星(500g〜5000kg)が1700回以上衝突したこと、(2) 月震の殆どは地下800km〜1000kmで起こること、(3) 月震は一ヶ月ほどのインターバルで発生していること※2、(4) 月震の大部分はマグニチュード2以下であること※3、 などを記録していた。 この実験から、(1) 月の内部構造が地球と同じように、地殻、マントル、中心核などで構成されていること※4、(2) 地殻は厚さが60〜70kmほどあって斜長石を多く含んでいること、(3) マントルは橄欖石や輝石に富んでいること、(4) 中心核は鉄や硫黄で構成されている公算が強く、その半径は450km以下で月の半径(1738km)の25%程度であること(地球の中心核は地球半径の54%ほどある)などが判明(推測も含む)した。 -----
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この実験は、爆薬によって月に地震 (月震) を発生させ(*A)、月の表層部分(地殻の上層部分)の構造を明らかにするものである。アポロ14号と16号で行われた。17号で行なわれた「Lunar Seismic Profiling Experiment」も同系統の実験といえる。 観測の結果、(1) アポロ14号、16号、17号のランディング・サイトにおいては、地殻の上層部分(数百メートルの上層部分)の伝播速度(P波)が秒速0.1km〜0.3km(*B)であること、(2) アポロ17号のランディング・サイトでは地表の玄武岩層の厚さが1.4km(*C)ほどあること、などを明らかにした。 -----
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月面に設置した反射装置に地球側(*A)からレーザービームを照射して地球と月の間の正確な距離を測定する実験である。イメージの装置が月面側の反射装置(Laser Ranging Retroreflector)だ。アポロ11号、 14号、15号で行われた。 月と地球の平均距離は 384,400km(最大 406,700km、最小 356,400km)であるが、この実験によって月が地球を回るその公転軌道が変動していることを確認した。年間 3.8cmの割合で月は地球から遠ざかっているのである。 この測定実験は、今までの我々の知識(*B)を修正し、なおかつ、アインシュタインの相対性理論の検証にも役立った。 -----
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この実験は、月表面の熱イオンを検出する実験で、月表面から帯電したイオンを検出すると共に、太陽風や地球の磁気との相互作用についても研究する。アポロ12号、14号、15号の各ミッションで行なわれた。 この実験で対象とされるのは、50電子ボルト(&秒速69km)以下のイオンで、それ以上の素粒子については、アポロ14号の Charged Particle Lunar Environment Experimentや、アポロ16号、17号の Cosmic Ray Detectorで研究される。 検出されたイオンの源は、(1) 太陽風、(2) 月の大気が太陽の紫外線でイオン化されたもの、あるいは(3) 流星体の衝突により放出されたガス、であると思われる。さらに、(4) 月面に激突した LM (月着陸船上部コンポーネント /ascent stage)やサターン・ロケットの第三段(S-IVB)の推進剤等も無視しえない。
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月の大気圧(分子数)を測定する実験である。月は非常に希薄ではあるが大気(気体分子群)を持っている。ただ、重力が小さい(脱出速度が小さい /月表面で秒速2.38km)ために大気が容易に宇宙空間に逃げてしまうのだ。月にとどまっている大気にしても太陽からの紫外線でイオン化されたり太陽風で飛ばされたりする運命にある。 この実験で計測された大気圧(分子数)は夜間で、1立方センチメートルあたり約200,000個の分子数である。これは、地球の大気の 100,000,000,000,000分の1 にすぎない(しかしゼロではないのだ)(*)。 この実験は12号、14号、15号で行われた。12号は短時間の実験であったが、14号と15号では月面に残された観測機器が1971年〜1975年まで観測結果を地球に送信していた。ただし、12号〜15号においては、月の大気の構成(気体の種別や割合等)までは観測されない。大気の成分・構成については17号の 「Lunar Atmospheric Composition Experiment」 を待つことになる。 ----- ※ イメージ下側左の小さな箱型の機器がCCGで、その右側がSIDE(Suprathermal Ion Detector Experiment)のもの。上側に見えるのはALSEP(Apollo Lunar Surface Experiments Package)と原子力発電機(放射性同位元素発電機 /The Radioisotope Thermal Generator /RTG)。
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月面に積もっている塵の層を研究する実験がアポロ11号、12号、14号、15号で実施された。LDD の実験機器は ALSEP(Apollo Lunar Surface Experiments Package)のセントラル・ステーション(核となる機器群)に含まれている。 アポロの有人月着陸以前は、かなりの量の塵が積もり層をなしていたと考えられていたが、実際に測定してみると、塵の層は予想されていた規模を遥かに下まわっていた。 この実験は、どちらかというと放射線や熱による太陽電池の劣化を調査することに主眼が置かれていた。いわば、科学よりも工学に寄与した実験といえる。 その他、アポロ14号では「Thermal Degradation Sample」というエンジニアリング・テストも行なわれている。
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月環境における帯電粒子 (素粒子) を測定する実験である。アポロ14号ミッションでのみで行われた。その結果 50〜50,000 電子ボルトのエネルギーを持つイオンを確認した(*A)。 アポロ14号の LM(月着陸船)上部コンポーネント(上昇・離陸ステージ)は、飛行士たちが CSM に乗り移ってから月面(*B)へ激突したが、この実験はそれに関するデータを取得している。LM 上部コンポーネントには未使用の推進剤が約180kg残っていて、それが激突によって二つの雲(*C)を作り出したのだ。 -----
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この実験は、月周回軌道上の宇宙船(CSM)と地球で電波をやり取りしてその電波の周波数の変移(ドップラー変移)を測定し、正確な宇宙船の速度(変化)を求めるものである。具体的には、2115 MHz の電波を地球側から宇宙船に送信し、それを受けた宇宙船側が地球に再送信する。0.01 Hz(0.6 mm/sec)の変移まで識別可能である。但し、宇宙船が月の裏側に入っている間は実験が行なえない。 なお、この実験は14号、15号、16号、そして17号で行われた。 宇宙船の速度(変化)を得ることの意義は、それによって「月の重力の位置的な変化」、「月を構成する物質の分布・密度」すなわち「月の内部構造」が明らかになることにある。 月周回軌道上の宇宙船の速度(変化)は、太陽の重力、地球の重力、および月の重力によって決定される。これらのうち、太陽の重力及び地球の重力の影響(数値)は既に判っているので、「宇宙船の速度(変化)」から「月の重力の位置的な変化」を求めることが出来るのである。 さらに、得られた「月の重力の位置的な変化」から、月内部の「物質の分布・密度」すなわち「構造」を推測することが可能となる。 なお、月の重力の時間的変移についてはアポロ17号の Lunar Surface Gravimeter で研究された (残念ながら実験は失敗)。 この実験によって MASCON(マスコン/重い物質) と呼ばれる重力異常地帯の存在が明らかになっていくのである。
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月周回軌道上の CSM(アポロ宇宙船)から月面に向けて電波を発信して、月面から跳ね返ってきた電波をカリフォルニアの追跡ステーションが記録し、月面の状態を観測するものである。アポロ14号、15号、16号で行われた(イメージはアポロ15号の CSM である。特徴的なアンテナが確認できる)。 ここにいう月面の状態とは、月面の凹凸や粗さ及び電気特性(特に、月面の岩石の誘電率)のことである。それらを観測する目的で「Bistatic Radar」実験が考案された。 なお、アポロ17号の Apollo Lunar Sounder Experiment や Surface Electrical Properties も参照。 |
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